
- 代表機関:京都大学大学院農学研究科 応用生物科学専攻
- 課題管理者:寺内 良平
- FAX:075-934-4334
目的と実施体制
世界三大穀物の一つであるコムギには、二倍体(2n = 14)の一粒系コムギ、四倍体(2n = 28)の二粒系コムギ、六倍体(2n = 42)の普通系コムギなどが存在します。現代の生活で主に利用されるパンコムギは、祖先二倍体由来のA,B,Dという3種類のゲノムを一つの核の中に持つ異質六倍体です。このようなゲノム構造の複雑さは、パンコムギの全ゲノム配列解読の大きな障害でしたが、我々NBRPコムギの代表機関である京都大学が参画した国際コンソーシアム(IWGSC)の主導により、完全なゲノム配列の解読に成功しました(Science 361: eaar7191, 2018)。今後、ゲノム配列を基礎にした有用遺伝子の同定と育種への利用など、様々な研究が促進されると考えられます。
世界のほとんどのGene Bankがコムギの栽培品種中心のコレクションである中、NBRPではコムギとその近縁種の野生種、在来系統および実験系統を中心とした収集・保存・提供を実施しています。ゲノム解列解読を機に、世界的に貴重なコムギ遺伝資源の保存・供給センターとして重要性が増すと期待しています。第4期NBRPでは、新たな遺伝解析用リソースの開発や各種コアコレクションの整備をすすめ、利用者の使いやすいコムギ遺伝資源の提供に努めています。そして、コムギリソースのデータベースKOMUGIに、出穂日等の表現型データと遺伝子型データを蓄積し、ユーザーが研究情報を利用しやすい環境を整備しています。また、農業生物資源ジーンバンク事業との連携による横断的データ検索システム(PGR-Gateway)により、双方の遺伝資源情報に効率的にアクセスすることが可能となっています。
提供リソース
コムギ属の野生種及び在来品種(約6,700系統)やエギロプス属、ライムギ属などの近縁種(約4,200系統)をはじめ、実験系統では全ゲノム解読に用いられた六倍体コムギの遺伝学標準品種であるChinese Springを中心に、その突然変異系統をはじめ、組換え近交系統や染色体置換系統、合成倍数体や異数体系統、異種染色体添加・置換系統、異種染色体欠失・転座系統、配偶子致死染色体系統、細胞質置換系統など(約1,600系統)を供給しています。DNAリソースとしては、ESTや全長cDNAクローンを保存しています。
リソース関連プログラム課題
【ゲノム情報等整備プログラム】
2019年度 | NBRP・コムギで整備中の東アジアコムギNAM集団親系統のゲノム多型解析 |
2017年度 | 日本産コムギ標準品質のゲノム解析によるコムギ多様性情報の整備 |
2009年度 | パンコムギ完全長cDNAリソースの整備(全長配列決定4905件) |
2007年度 | パンコムギ完全長cDNAリソースの整備 (5740クローン) |
2002年度-2003年度 | ゲノム情報 – 成果:ゲノム情報等整備プログラム:2002年度-2006年度 |