目的と実施体制
カイコは人間が維持・保存しているもの以外存在せず、唯一日本でのみ系統として体系的に維持・保存されていることから、我が国固有の遺伝資源であると同時に世界の財産でもあります。このような背景から多数の自然突然変異体が発見され、現在のNBRPカイコのコアとなっています。これらの変異体の中には、ヒトの遺伝疾患のモデルとして活用出来る例が次々に発見されています。また、カイコゲノム解析の進展により、食性及び嗜好(選択)性、ウイルスや糸状菌、細菌に対する抵抗性・感受性、ならびに休眠などの昆虫特異的な機能に関する遺伝子の解明が進み、病害虫に対する新しい農薬の創成が期待されることから、農業害虫の制圧のための好個のモデル昆虫といえます。さらに、人間と共通する病気はなく、養蚕で培った技術により飼育は容易でかつ安価であることから、遺伝子改変カイコを用いた有用物質生産(昆虫工場)や、実験動物の代替生物として、毒性試験や医薬品のスクリーニングに利用されています。
本プロジェクトでは、代表機関である九州大学と分担機関である信州大学が生体の収集・保存・提供を担当し、分担機関である学習院大学がDNAライブラリー(Fosmid、BAC)やcDNAライブラリーの取集・保存・提供を行います。飼育経験のない研究者に対しては飼育方法・管理技術等のサービスやサポートを提供する他、教育や文化活動でのカイコ利用者へも提供を行なっています。
提供リソース
九州大学ではゲノム情報解析に使用した標準系統であるp50系統(図1)をはじめ、形質変異体系統を、信州大学では日本に生息するテンサン、サクサン、シンジュサン等の近縁野蚕系統などを、合わせて約500種類提供しています。学習院大学では、19万以上のクローンに及ぶカイコと近縁種のゲノムDNAライブラリー(Fosmid、BAC)やcDNAライブラリーの提供を行っています。
リソース関連プログラム課題
【ゲノム情報等整備プログラム】
2018年度 | 薬理・生理・病理学研究に適した大型カイコ実験系統のゲノムリシークエンシング |
2016年度 | 起源を異にするカイコ近交系のゲノムリシークエンシング(2) |
2015年度 | 起源を異にするカイコ近交系のゲノムリシークエンシング |
2006年度 | ゲノム情報 – 成果:ゲノム情報等整備プログラム:2002年度-2006年度 |
【基盤技術整備プログラム】
2018年度-2019年度 | カイコ及び近縁野蚕の凍結保存技術の高度化 |
2014年度 | カイコの凍結保存技術の開発 |