目的と実施体制
ネッタイツメガエル(Xenopus tropicalis)は、発生生物学のモデル実験動物として汎用されてきたアフリカツメガエル(Xenopus laevis)の近縁種です。ネッタイツメガエルは、小さな2倍体ゲノム(サイズはヒトの約半分)を持ち、世代時間も4〜6ヶ月程と短い等、遺伝学的研究に適した特性を備えていることから、近年新たに遺伝学のモデル動物として確立されました。また、全ゲノム情報が公開された最初の両生類であり、ヒトの疾患関連遺伝子の79%以上が保存されています(Science 328: 633-636, 2010)。CRISPR-Cas9システムを用いれば、ファウンダー世代において、それらの遺伝子を体細胞変異率80〜99%の効率で破壊することが可能です(Genes Cells 21: 755-771, 2016)。またI-SceIメガヌクレアーゼ法を用いれば、高効率なトランスジェネシスが可能であり、導入遺伝子の発現は次世代においても維持されます(Nat Protoc 1: 1703-1710, 2006)。
しかし、ネッタイツメガエルはサイエンスコミュニティーに登場して日が浅い発展途上の実験動物であり、研究上の方法や情報共有などの基盤整備が十分ではありません。そこで本事業では、代表機関である広島大学両生類研究センターがリソースの提供と収集を、バックアップ協力機関である早稲田大学、日本大学、山形大学が系統保存を担当し、ネッタイツメガエルをモデル動物として洗練させるための基盤整備と、利用者の増加に努めます。その一環として、近交系統の作出や、これら系統の飼育法・遺伝子組換え技術・インフォマティクス解析の技術講習会を毎年開催しています。
提供リソース
現在の我々のリソースの主力は、Nigerian A(ゲノム解読プロジェクトに用いられた野生型近交系)、Nigerian H(Nigerian A の派生系統、飼育が容易)、Nigerian BH(旧名Golden,Nigerian A/Hに遺伝的に近いが、より丈夫)、Ivory Coast(Nigerian A/Hとはやや遺伝的距離があるが、丈夫で使い易い)の4種類の野生型近交系統です。幹細胞や分化細胞の生体イメージング解析に有用なトランスジェニック系統等の収集も進めています(図1、Tg(tnbb2b:GFP) 1Ogino系統)。飼育施設では常時約6千匹を維持しており、毎年3,000〜6,000匹の成体や幼生を研究者や教育者に提供しています。ゲノムDNAやRNA、マーカー遺伝子を持つプラスミド等もリソースの一部として提供しています。
リソース関連プログラム課題
【ゲノム情報等整備プログラム】
2018年度 | ネッタイツメガエル近交系のゲノム多型情報の整備 |
2002年度-2003年度 | ゲノム情報 – 成果:ゲノム情報等整備プログラム:2002年度-2006年度 |
【基盤技術整備プログラム】
2016年度 | ゲノム編集技術を用いた効率的遺伝子ノックイン系統作製システムの開発 |