NBRP一般微生物の課題管理者である理化学研究所バイオリソース研究センターの大熊盛也室長を含む研究グループが、新たな研究論文を発表しました。
東京大学の按田 瑞恵 特任助教、山内 駿 大学院生、コセンティーノ サルヴァトーレ 特任助教、岩崎 渉 教授と、理化学研究所 バイオリソース研究センターの坂本 光央 専任研究員、大熊 盛也 室長、高島 昌子 ユニットリーダー(研究当時)、国立遺伝学研究所の豊田 敦 特任教授らの共同研究チームは、多様な環境に生息する2門2科4属5種のバクテリア(細菌)が、生物の基本構成要素の一つであるタンパク質の合成に必須なリボソームRNA(rRNA)遺伝子をプラスミドだけに持つことを発見しました。また、今回解析したバクテリアのうちPersicobacteraceae科に属するバクテリアは、染色体からrRNA遺伝子を失った状態でも数億年にわたって絶滅しなかったことを明らかにしました。
本研究の発見は、「生存に必須な遺伝子を長期間にわたって安定して子孫に伝えるためには染色体上で受け渡す必要がある」とする生物学における定説を否定するものです。今後、物質生産といった工業応用や薬剤耐性菌の出現などで重要な役割を果たすプラスミドの新たな基本的性質の解明や、プラスミドを安定的に維持する技術開発への貢献が期待されます。
本研究成果は、2023年11月14日に英国科学誌「Nature Communications」に掲載されました。
本研究は、科研費「特別研究員奨励費(課題番号:18J00444)」、「新学術領域研究(研究領域提案型)『学術研究支援基盤形成』先進ゲノム解析研究推進プラットフォーム(課題番号:16H06279(PAGS))」、「新学術領域研究(研究領域提案型)(課題番号:19H05688)」、「学術変革領域研究(学術研究支援基盤形成)先進ゲノム解析研究推進プラットフォーム(課題番号:22H04925(PAGS))」、科学技術振興機構(JST)「戦略的創造研究推進事業CREST(課題番号:JPMJCR19S2)」の支援により実施されました。
東京大学大学院新領域創成科学研究科HPによるリリース情報はこちらです。
(論文詳細)
“Bacteria can maintain rRNA operons solely on plasmids for hundreds of millions of years”
Mizue Anda, Shun Yamanouchi, Salvatore Cosentino, Mitsuo Sakamoto, Moriya Ohkuma, Masako Takashima, Atsushi Toyoda & Wataru Iwasaki.
Nature Communications 誌.
2023年11月14日号掲載