バイオリソースが拓く3次元微細構造イメージングの最先端

「バイオリソースが拓く3次元微細構造イメージングの最先端」

大野 伸彦(自治医科大学/生理学研究所)

 電子顕微鏡は微細な構造を理解するために不可欠な技術として、半世紀以上にわたり様々な分野の進展に貢献してきました。光学顕微鏡などの他のイメージング技術との相関観察やクライオ電子顕微鏡など、近年も電子顕微鏡に関連する技術的な進歩は注目を集めています。その中でも、数十um~数mmにおよぶ領域から数百枚~数千枚の連続電子顕微鏡画像を取得し、nm単位の解像度で立体構造を再構築する3次元微細構造イメージング技術は、コネクトミクスと呼ばれる神経科学分野をはじめとして、様々な生命科学分野における微細形態観察を大きく変えつつあります。そして、バイオリソースを用いた研究にこうした最先端の電子顕微鏡技術を応用することで、神経疾患における細胞小器官の立体的な構造変化やその病態生理における役割の解明など、多くの成果が得られつつあります。また、人工的に改変されたペルオキシダーゼなどの電子顕微鏡イメージングのための新たな分子標識技術も開発されてきており、こうした標識技術を3次元形態解析技術に組み合わせるためのバイオリソースの活用は、画像内における分子の立体的な分布の可視化や、従来は形態情報のみによって同定されていた構造の発現分子による分類などに極めて有用です。さらに、深層学習による自動画像解析技術の向上は、大量に得られる画像データの解析コストを大きく低減しつつあり、3次元微細構造イメージングにおけるバイオリソースの利活用との相乗効果が期待されます。本講演では急速に普及しつつある電子顕微鏡による3次元微細構造イメージングの大きな進展と活用を促す取り組みについて紹介し、その中でバイオリソースが果たす貢献についても議論したいと思います。

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