プログラムディレクター挨拶

プログラムディレクター
小原 雄治

バイオリソースは、研究開発の材料としての動物・植物・微生物の系統・集団・組織・細胞・遺伝子材料等及びそれらの情報であり 、ライフサイエンス分野の研究の発展のために必須の研究基盤です。ライフサイエンス研究においては、バイオリソースを研究者間で共有することが重要です。バイオリソースは長年の研究から産み出されたものであり、それをもとにして次の新たな研究が産まれます。また共通の材料を使うことは、研究結果の比較のためにも必須だからです。我が国のライフサイエンス研究の国際的優位性を確保するとともに、研究の効果的・効率的な推進を図るためには、 国は長期的な視点から、このような研究基盤の整備を行う必要があります。

文部科学省では、科学技術基本計画を受け、ライフサイエンスの総合的な推進を図る観点から、実験動植物や微生物等のバイオリソースのうち、国が戦略的に整備することが重要なものについて、体系的な収集・保存・提供等の体制整備を行う「ナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)」を2002年度から実施してまいりました。5年ごとの内容見直しを行い、2022年度より第5期が開始され、新たに加齢マウスリソースときのこリソースを加えて、33のバイオリソースの整備事業及びそれらに関する情報の中核拠点の整備が進められています。すでに多くのバイオリソースは世界最高水準に達していますが、加えて、ゲノム解析等による付加価値向上や保存技術等の開発を実施し、一層の質の向上を図っております。

バイオリソースの重要性は、第6期科学技術・イノベーション基本計画(2021~2025年度)においては、「データ駆動型研究の基盤となるゲノム・データをはじめとした情報基盤や生物遺伝資源等の戦略的・体系的な整備を推進する」とされています。現在、プログラムディレクター(PD)とプログラムオフィサー(PO)が中心となり、ライフサイエンス研究の動向を踏まえながら、本プロジェクトの活動が国内外の研究コミュニティーにとって一層欠くべからざる知的基盤となるよう、活動を進めております。本プロジェクトは一度途絶えると二度と復元できない生き物を対象としております。このことは東日本大震災において改めて強く認識させられましたが、このために凍結保存等による長期保存やバックアップ体制の整備を進めてきました。また、今回のコロナ禍では、職員の出勤抑制等によりリソースの維持が困難になる恐れが生じましたので、遠隔での監視体制や飼育・品質維持の省力化を進めています。今後とも、様々な危機に対応して、着実にリソースを維持・提供できるように努めてまいりますので、本プロジェクトへの一層のご支援を賜りますようお願いいたします。

2022年4月

ナショナルバイオリソースプロジェクト
プログラムディレクター  小原 雄治
大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構
ライフサイエンス統合データベースセンター センター長

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